ブラウザの「シークレットモード」、追跡は本当に防げる?
インターネットを利用していると、「シークレットモード」や「プライベートブラウズ」といった機能を目にすることがあるかと思います。なんとなく「これを使えば、自分が何を見たかバレないのかな?」と思って使っている方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、このシークレットモードが一体何をしてくれるのか、そしてオンラインでの追跡に対してどのくらい効果があるのかを、分かりやすくご説明します。
シークレットモードって、何をしてくれるの?
シークレットモードを有効にしてウェブサイトを見ると、主に以下の情報があなたのパソコンやスマートフォンのブラウザに保存されなくなります。
- 閲覧履歴: どのページを見たか、という記録が残りません。
- Cookie(クッキー): ウェブサイトがあなたのブラウザに一時的に保存する小さな情報ファイルです。これにより、次回訪問時にログイン状態を保ったり、カートの内容を記憶したりしますが、シークレットモード中はこれらの情報がセッション終了時に削除されます。
- フォームの入力情報: 検索バーに入力した内容や、ウェブサイトのフォームに入力した名前や住所などが保存されません。
- サイトデータ: ウェブサイトが動作を速くするために保存する一時的なデータなども、セッション終了時に削除されます。
つまり、シークレットモードは、あなたのデバイスを使っている他の人が、あなたが「いつ」「どんなサイトを見たか」を知ることを難しくする機能と言えます。家族や職場の共有パソコンなどで、自分の閲覧履歴を残したくない場合に役立ちます。
シークレットモードでは「防げない」こと
しかし、シークレットモードは万能ではありません。残念ながら、以下のことはシークレットモードを使っても防ぐことができません。
- あなたのIPアドレス: インターネット上のあなたの「住所」のようなものです。訪問したウェブサイトには、このIPアドレスが伝わります。
- ウェブサイト自身の記録: あなたがウェブサイトにアクセスしたという事実は、そのウェブサイト側のサーバーには記録されます。
- インターネットサービスプロバイダ(ISP)の記録: あなたが契約しているインターネット回線会社(例:NTT、KDDI、ソフトバンクなど)は、あなたがいつ、どのサイトに接続したかを知ることができます。
- 職場のネットワークなど: 職場や学校のネットワークを通じてインターネットを利用している場合、そのネットワーク管理者はあなたのアクセス状況を監視できる可能性があります。
- ダウンロードしたファイル: シークレットモード中にダウンロードしたファイルは、通常通りデバイスに残ります。
- ブックマーク: シークレットモード中にブックマークしたサイトは、通常のモードに戻っても残ります。
- ログイン情報: シークレットモード中にウェブサイトにログインした場合、そのセッション中はログイン状態が保たれますが、セッションを終了(シークレットモードのウィンドウを閉じるなど)するとログイン状態は解除され、次回からは再度ログインが必要です。
トラッキング広告との関係は?
トラッキング広告は、あなたのウェブサイト閲覧履歴や検索履歴、オンラインでの行動などを収集・分析して、あなたに「関連性の高い」と思われる広告を表示する仕組みです。主にCookieなどの技術が使われます。
シークレットモードを使うと、そのシークレットモードで開いたウィンドウ内での新しいCookieは、ウィンドウを閉じると削除されます。そのため、そのシークレットモードのセッション中に収集された情報に基づいたトラッキングは、ある程度防ぐことができます。
しかし、シークレットモードは既存のCookieには影響しません。もし通常のモードですでに多くのCookieが保存されており、それらが広告会社によって利用されている場合、シークレットモードを使っても、過去の情報に基づいたトラッキング広告が表示され続ける可能性はあります。
また、Cookie以外の方法(IPアドレス、フィンガープリンティングなど)で追跡を行っているウェブサイトや広告ネットワークに対しては、シークレットモードの効果は限定的です。
結論として、シークレットモードは「あなたのデバイスに閲覧履歴やCookieを残さない」という点ではプライバシー保護に役立ちますが、オンライン広告による追跡を完全に防ぐ機能ではない、と理解しておきましょう。
オンライン追跡からもっと身を守るには?
シークレットモードだけでは不十分だと分かったところで、トラッキング広告など、より広範なオンライン追跡から身を守るための具体的な方法をいくつかご紹介します。どれも比較的簡単に設定できるものばかりです。
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ブラウザのCookie設定を見直す: 多くのブラウザでは、Cookieの受け入れを制限する設定ができます。
- 「サードパーティCookieをブロックする」設定を有効にすることをおすすめします。サードパーティCookieは、あなたが訪れているサイトとは別の第三者(主に広告会社)が設置するCookieで、ウェブサイトを横断してあなたの行動を追跡するためによく使われます。
- すべてのCookieをブロックすることも可能ですが、ウェブサイトの機能の一部が使えなくなる場合があるため、「サードパーティCookieのみブロック」から試してみるのが良いでしょう。
設定場所の例(ブラウザによって名称は異なります): * Google Chrome: 設定 > プライバシーとセキュリティ > サイトの設定 > Cookie とサイトデータ * Microsoft Edge: 設定 > Cookie とサイトのアクセス許可 > Cookie とサイトデータ * Safari: 設定 > プライバシー * Firefox: 設定 > プライバシーとセキュリティ > 拡張トラッキング保護
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トラッキング防止機能付きのブラウザを使う: 近年、プライバシー保護に力を入れているブラウザが増えています。例えば、FirefoxやBraveなどは、初期設定である程度トラッキングをブロックする機能を備えています。普段お使いのブラウザに不安があれば、これらのブラウザを試してみるのも一つの方法です。
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ブラウザの拡張機能を利用する: AdBlock PlusやuBlock Originのような広告ブロッカーの中には、トラッキングをブロックする機能を持つものがあります。また、「Privacy Badger」のような、トラッキングを行うCookieやトラッカーを自動的に学習してブロックする専門の拡張機能もあります。これらの拡張機能をブラウザに追加することで、より強力に追跡を防ぐことができます。
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各サービスのプライバシー設定を確認する: GoogleやFacebookなどのサービスは、あなたの活動履歴を収集し、広告表示に利用しています。これらのサービスのアカウント設定画面で、「ウェブとアプリのアクティビティ」や「広告設定」などを確認し、トラッキングに使われる情報の種類を制限したり、パーソナライズド広告を無効にしたりすることができます。少し手間はかかりますが、効果的な方法です。
まとめ
ブラウザのシークレットモードは、あなたのデバイス上の閲覧履歴などを消去する機能であり、共有パソコンなどでのプライバシー保護には役立ちます。しかし、オンライン広告による追跡やインターネット上での完全な匿名性を保証するものではありません。
オンラインでの追跡からよりしっかりと身を守るためには、シークレットモードだけに頼るのではなく、ブラウザのCookie設定の見直し、トラッキング防止機能を持つブラウザや拡張機能の利用、そして普段使っているサービスのプライバシー設定の確認など、いくつかの対策を組み合わせて行うことが効果的です。
こうした対策を少しずつでも行うことで、あなたがオンラインでどのように扱われるかについて、よりコントロールできるようになり、漠然とした不安を軽減することに繋がるはずです。